2017.2.6 月曜日
食に翻弄される現代人。 食物依存と極度なダイエットから「糖尿病」にも
糖尿病の患者数は今世界におよそ3億8,200万人に上ります。そして予測では2035年までに5億9,200万に増加するも言われています。(国際糖尿病連合(IDF))主な原因はインスリンが細胞に運びきれない血中にあふれだした糖ですが、この現象は食べ過ぎることによっておこる脳の異変から起きるということも明らかになってきました。
およそ1万3千年前、人類は農耕をはじめました。安定した食料の調達は食への欲求を必要以上にかきたて、食への過度な依存を招いたといえます。
この依存は食べることをコントロールできない、薬物や麻薬依存症患者のような「食物依存症」の状態を作りました。その一方でダイエットに走るあまり日本では生まれてくる低体重の赤ちゃんの体にも異変がおき、将来糖尿病患者が増えるのではと危惧されています。
今なぜ、糖尿病が急増しているのか、人類の進化と社会とのかかわりにその答えはあるようです。
なぜ食べ続けてしまうのか
なぜ肥満になるまで食べ続けてしまうのか。脳科学によって明らかになってきました。
アメリカ国立薬物乱用研究所の調査では、高度肥満の人にフライドチキンやチーズケーキなど自分の好物の匂いを嗅いだときにおきる脳の変化をしらべました。食事による快感と満足の調査です。大脳基底核に運ばれたドーパミンという快感物質が受容体に摂りこまれると脳が満足しますが、一般の人と高度肥満の人とではそのドーパミン受容体の量が違うという実験報告がされました。高度肥満の人はドーパミン受容体の量が少なかったのです。
これは薬物依存症患者でおきることと同じ変化でした。
脳にいったい何がおきたのでしょうか
食べ続けること、すなわち長期間過剰な刺激を受け続けるとドーパミン受容体は減っていき、そのため、大脳基底核に伝わる信号が麻痺をおこします。満足感を得るためにはもっともっと食べなければなりません。いわば依存症の状態が脳の中で起きてしまっているのです。
生きていくうえで必要最低限の食事しかしない、タンザニアのフッザ族など狩猟採集の生活は食べ物が潤沢にはありません。獲物がないときは木の実や地中のいもや木の根が重要な食物となります。
現代の私達のようにいつでも好きなだけ食べるという習慣・ストレス・習慣性の高い加工食品や添加物が食物依存症を招いてしまったともいえるでしょう。
インスリンとの悩ましい関係 日本人の糖尿病患者75%は肥満ではないという事実
実は糖尿病になる日本人には極度の肥満の方はいないのです。日本人はインスリンが少ししかでません。脂肪細胞に摂りいれられず、肥満にはなりにくいのです。インスリンは民族の体型の変化をもたらすひとつの要素であったのです。ではどうしてインスリンの多い人、少ない人がいるのでしょうか?ヨーロッパ人の祖先たちは7000年前では農業でなく牧畜で肉や乳を主食としていました中世ヨーロッパでは1日60gほど脂肪を摂っていたのです。この食事によってヨーロッパ人はインスリンが過剰にでるように時間をかけて変化していきました。農耕民族であった日本人はほとんど肉を食べない生活を送ってきたので、狩猟民族であった欧米人ほど多量なインスリン分泌を必要としていませんでした。
実際、戦前においては糖尿病にかかる人はそれほど多くなかったのです。ところが戦後60数年のあいだに、肉や乳製品など脂肪の摂取量は約4倍に増えました。この欧米型の食生活への変化に、日本人のインスリン分泌機能が適応できていないことが、糖尿病激増の大きな理由になっていると考えられます。
「飢餓の冬」に見る低出生児の影響とその後の飽食
アムステルダム大学調べでは、第二次世界大戦後、ナチスドイツの占領下にあったオランダ「飢餓の冬」の時代に生まれた出生時の体重は2500グラム以下、その後の追跡調査ではその多くの人が糖尿病予備軍であることが発表されました。
胎児は膵臓の発育が抑制されインスリンも未発達であったと想像されています。その後急激に食糧事情が回復すると省エネモードのカラダには想定を上回る糖と脂肪が入ってきたのですから身体が順応しきれずに20代になって糖尿病を発症する患者もいるのです。
実は今、インドや中国が同じ影響を受けていいます。
ほんの30年ほど前まではインドや中国の食糧事情は悪く、妊娠中も出産後も胎児の健康状態は万全ではなかったでしょう。しかし今、ITと経済大国のトップに迫る中国とインドの食糧事情は大きく変化しました。30年前に生まれた赤ちゃんは体内の機能が今の食糧事情を想定して生まれてきてはいないのに、成長期をすぎて急激にファストフードや加工品、肉・乳製品の摂取を日常的に食べていたらどうなるのでしょう。
糖尿病だけでなく、心臓病や脳卒中など他の疾病も想像を超えた勢いで伸びているのです。
食が影響する筆頭の病、糖尿病は、食べたい、豊かでいたいという現代人の気持ちを翻弄するかのようにその勢いを今も伸ばしています。
3代先まで影響する母親の食習慣 日本人でも低体重の子どもが増えている
日本の若いお母さんたちは出産後自分のスタイルを気にするあまり、ほとんど太らず子どもを産む人もいたようです。これは大変危険なこととされ、母親のための栄養教室も病院で実施されています。
このような子どもからいかなる疾病が発症するか、糖尿病学会では警鐘を鳴らしています。食べ過ぎても糖尿病のリスク、そしてダイエットをし過ぎても自分だけでなく、次の世代に影響を与えてしまう今の食習慣を見なおしておきたいところです。
糖尿病 食の変化がもたらす人類固有の病
糖尿病はもっとも「食べる」ことと関わりのある病です。 食べたいという欲求のコントロールと体内調整インスリンとのまさに戦いの病です。
これだけ刺激的なおいしそうな食があふれ、お金さえ出せば何でも食べられる時代においては、自分自身のコントロール能力がまず第一に求められることはいうまでもありません。
しかしながら、私達は学校で糖尿病や食のコントロールの健康教育は受けていきていません。家庭、あるいは給食で出されるものが良いもの、食べて良いものというように認識してしまうでしょう。先進国特有の飽食な時代にどうコントロールし健康を維持をしていくか、自らが作りだした食べもので病も健康も作るという悩ましい時代に突入したといってもいいでしょう。
<トピック> 脂肪細胞を摂りこむ
なぜ、肥満になると糖尿病になってしまうのでしょうか?
分解された食物は血中に糖となって全身に運ばれます。すると膵臓でインスリンというホルモンが作られ、血液中の糖を細胞に運びます。インスリンは筋肉の細胞の扉の受容体にセットされると糖を運び込みエネルギーとして使われます。
余った糖は脂肪細胞に蓄積され、それが全身に多く蓄積されると肥満になります。ところが脂肪細胞は限界まで糖を取り込むと、今度は吸収を阻害する物質を出します。インスリンの受容体がブロックされ細胞の扉が開かなくなります。すると血液中に糖があふれてしまいます。
これが糖尿病のベースになります。
糖尿病は深刻な合併症をつくります。脚の切断による壊疽、網膜症は失明する恐れもあり、腎臓病は人工透析の人生です。いずれも毛細血管が糖で起こされることによっておこります。血液中の糖の濃度が高くなると毛細血管壁を傷め、出血、網の目のような毛細血管のある網膜や細胞が次々と死んでいくことになります。
そうした結果から鑑みると、がん予防のためには、細胞を傷つける糖化や酸化を防ぐフィトケミカルや、腸内環境を整える繊維質を意識して、野菜を中心にした「日本の伝統食」に回帰することが有効と言えるでしょう。
<コラム>がん予防につながる「日本の伝統食」
1)抗酸化物質が豊富な野菜をたっぷり
がん化を引き起こす細胞の変質は、活性酸素による酸化や高血糖による糖化などが大きく影響しています。それらを抑制する抗酸化・抗糖化物質を意識して摂りましょう。特に野菜に含まれるフィトケミカルは最有力物質です。
2)繊維質を摂って腸内環境マイクロバイオームを整える
大腸がん予防に効果的なのが、繊維質。体内から余分なもの、毒性のあるものを効率的に排出し、腸内環境内の細菌バランスを整える働きを持っています。特に腸は、日々発生するがん細胞を駆逐する免疫システムを司る重要な場所であり、それががん予防にも大きく紐づいているといえるでしょう。
3)油や糖質を摂りすぎず、肥満を避ける
もともと欧米食に比べて油分が少なく、ローカロリーといわれる日本食。しっかり野菜類を摂って、糖質であるご飯を食べ過ぎなければ、そうそう太ることはありません。これまでの研究結果から、肥満はがんの危険因子の一つことは明らか。つまり、その意味でも、伝統的な日本食はがん予防に適していると言えるでしょう。
免疫力を落とす深刻な「化学物質」のリスク
「がんを予防する食べ方」において、食材選びはもちろんですが、農薬や食品添加物などの化学物質をできるだけ体内に摂らないことも重要ポイントといえるでしょう。化学物質には体内に入るとフリーラジカル化して、体内を傷つけるものも少なくありません。たとえば、どんなに野菜が豊富でローカロリーといっても、食品添加物たっぷりの加工品は避けたいもの。
とはいえ、これだけ農薬が使われ、加工食品がで回る中では、どうしても避けられない傾向があり、飲み水や空気からフリーラジカルを取り込むことも少なからずあります。そうした体内に取り込んでしまった有害物質を排出するためにも、水分をしっかりとって、繊維質などのデトックス効果の高い成分を積極的にとることが大切です。