2016.7.25 月曜日

標高の高いところにいるだけでアンチエイジング!? 心肺機能も鍛えられ、認知症などの予防の期待も


近年、老若男女を問わずトレッキング人気が高まり、健康雑誌などでもその効果が取り上げられています。本格的な登山にいきなりチャレンジするのはハードルが高いですが、週末を利用した日帰りトレッキングは、自身の体調との調整がしやすく、多くの健康効果が期待できます。夏・秋にちょっと知っているだけで安心のトレッキング健康法をご伝授します。

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社)日本アンチエイジングフード協会では、高地でのトレッキングが健康長寿の寄与に関連性するか、という研究の一環として、2016年5月29日に長野県駒ヶ根の千畳敷カールで週末トレッキングを行いました。自身の心拍数などの変化を計測しながら、高地トレッキングを体験してその効果を探るという体験実習です。

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計測で用いたのはこちらエプソンパルセンスGPS機能付き脈拍計。

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前日28日に標高800メートルにある駒ケ根キャンプセンターで1日すごして身体を慣らし、バスでしらびだいら駅(1882メートル)まで移動、そこから一気にロープウェイで千畳敷平駅(標高2612メートル)まで移動しました。残雪が残る高地を40分ほどトレッキングです。

社)日本アンチエイジングフード協会の白澤卓二理事長は、80歳で3回目のエベレスト登頂に成功した三浦雄一郎さんの主治医でもあります。三浦雄一郎さんが70歳のときから「健康管理を行い、きたるべきときに備えて最大の体調に整え、エベレスト登頂を成功させること」を目標にサポートしてきました。
白澤教授は言います「人間の適応能力は本当に素晴らしい。主治医としてサポートできたことをうれしく思っている」。

三浦雄一郎さん 公式ホームページより

三浦雄一郎さん 公式ホームページより

そもそも、8000メートルを超えるエベレストの頂上は、空気は平地の3分の1しかなく、気温はマイナス20度、デスゾーンと呼ばれ、ふつうの人間がいれば5分以内に心肺機能停止に陥る過酷な環境です。三浦雄一郎さんはこの頂上に1時間以上滞在し、撮影のためにマスクを外して20分ほど過ごしています。
80歳を超えた体が極限の状況に耐えられたのは、毎日行っているトレーニングの賜物です。

実は、60代の頃の三浦雄一郎さんはトレーニングどころか、太りぎみで糖尿病や高血圧を併せ持ったメタボおじさんでした。自身が65歳のときに当時90歳を超えた父親からモンブランをスキーで滑降したいと聞かされ、それに刺激を受け「エベレスト登頂」が目標となったそうです。その後、70歳でエベレスト登頂に成功、それに満足することなく、80歳で三度目の登頂を成し遂げました。

もちろん、一般の人が三浦雄一郎さんのようにエベレストにチャレンジするのは現実的ではありません。エベレストでなくとも、もっと身近な日本の山を歩くことが、あなたの健康の維持・増進に役立ちます。
わかりやすく言えば、高度2,000メートルを超える高地でのトレッキングが、あなたの心肺機能を鍛えてくれるというわけです。

信州大学大学院医学系研究科・スポーツ医科学講座の能勢博教授によると、標高2000メートルでは7キロカロリーで歩いていたけれど、6000メートルでは4キロカロリー(2009年、エベレスト登頂時の三浦雄一郎さんデータ)になっていたそうです。高地では平地の60%ほどの力でしか運動できないということになります。
つまり、高地ではただ歩くだけでも平地でハードな運動を行ったときの負荷がかかっているということになります。

白澤卓二理事長は、高地トレーニングには次のような効果が期待できるといいます。

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①心肺機能アップ

2,000〜2500メートルを超える高地は、平地よりも空気の酸素濃度が低く、海抜ゼロメートルの場所に比べて約3分の1になります。酸素は私たちが生命を維持するために必要不可欠なもの。酸素濃度が低くなると、心臓や肺は少ない酸素を効率よく取り込もうとして平地にいるときよりも大きな負荷がかかり、心肺機能アップに役立ちます。マラソン選手などが標高の高い高地でトレーニングを行うのは、心肺機能をアップさせるためです。標高の高い高地を歩くことは、それだけで心肺機能アップになります。

②酸素濃度のセンシング機能アップ

高地でトレッキングをするときは高山病への注意が必要です。高山病とは2500メートル以上の高地に登ったとき、酸素濃度が低下することによって頭痛、めまい、食欲不振、呼吸困難などの症状が起こった状態のこと。高地に登り大気中の酸素濃度が低下すると、呼吸を深く、浅くして血液中の酸素濃度を上げようとしますが、これがうまくいかないと、高山病を発症してしまいます。この酸素濃度のセンシングを行っているのが頸動脈小体で、加齢ともにその機能は低下します。低酸素状態にいるとこのセンシング機能がきたえられます。

日本アルプスという山岳地帯を有する長野県には、90歳を超えても元気な高齢者がたくさんいます。その秘密のひとつに、高地で過ごしていることが少なからず関係しているかもしれません。