2016.9.6 火曜日
出汁とUMAMIを科学する ~天然素材の合わせ出汁でアンチエイジング~
出汁は調理に使う塩分を控え、食材のおいしさを引き立たせます。また、近年では、出汁の香りに心を落ち着ける効果が確認されるなど、心身ともに日本人の健康な生活を支えている出汁。一言で出汁といっても、効能や扱いは素材によって変わり、グループも違うこと、ご存じでしたか?
世界的にも注目を集める、和食の基本「出汁」とUMAMI
2013年12月にユネスコの無形文化遺産に和食が登録されたことをきっかけに、世界中で和食の味の基本である出汁(UMAMI)に注目が集まっています。 この出汁、つまりは英語でのUMAMIとしても認知度が高まってきましたがその食養生効果については果たしてどうなのでしょうか?
代表的な出汁は、昆布、煮干し、しいたけ、かつお節、貝類があります。
昆布出汁は上品で控えめなうま味を持ち、アミノ酸の一つであるグルタミン酸が主なうま味成分です。昆布は産地や収穫年によって、だしの風味が変わるため自分好みの昆布を見つけることも楽しいでしょう。昆布だしは精進料理など、野菜の料理によく合います。
干し椎茸出汁の主なうま味成分はグアニル酸。グルニア酸を分解する酵素はおよそ45~50℃で活性化するため、干し椎茸の水戻しはできるだけ低温で行いましょう。ビタミンDの宝庫でもあるので、カルシウムを一緒に摂るのが吸収率も高めます。
煮干だしの主なうま味成分は、イノシン酸です。煮干しに使われる魚の種類は、カタクチイワシやトビウオなど。かつお出汁より酸味が弱く、強い香りを持つ出汁が取れるのが特徴です。そのため、「みそ汁」や「麺類のつゆ」、「煮物」などに向いています。
かつお出汁をとるかつお節には、うまみ成分のイノシン酸が多量に含まれています。イノシン酸は、全身の細胞を活性化させ、新陳代謝を促すので、若々しさを保つのに役立ちます。イノシン酸は肝臓でも生成できますが、加齢によってその能力は低下するため、食事で摂取することがおすすめです。
貝の出汁貝類にも独特な旨味と出汁が出ます。コハク酸という旨味成分がその役割。あさり、はまぐり、しじみなどがありますが、春が旬で最も良い出汁が出ます。実は日本酒の旨味もコハク酸です。
旨味は3つのグループに大別 アミノ酸系・核酸系・有機酸系
旨味を呈する物質はアミノ酸系・核酸系・有機酸系のグループに分けられます。特にアミノ酸系は野菜にも含まれトマトや白菜にも含まれています。
旨味は相乗効果でアンチエイジング効果がある。
うま味物質は単独で使うよりも、アミノ酸であるグルタミン酸と核酸系うま味物質(イノシン酸やグアニル酸)を組み合わせることで、うま味が飛躍的に強くなることが知られています。このような「うま味の相乗効果」は経験的に料理に応用されてきました。
例えば日本料理のだしはグルタミン酸を多く含む昆布と、イノシン酸が多いかつお節の合わせ出汁が基本になっています。
また、出汁の香りの効果にも注目が集まっています。
かつお節は、製造過程で320種類以上の香り成分が醸し出されると言われています。このなかには心を落ち着ける成分が含まれていることが分かっており、香りの記憶が日本人の心の安定にも寄与しているではないかと、研究が進められているところです。
鰹節に含まれる必須アミノ酸「トリプトファン」の効果
必須アミノ酸のひとつ「トリプトファン」が脳に運ばれるとセロトニンという神経伝達物質を作る働きをしますが、セロトニンには心のバランスを保ち興奮を抑える作用があるので、ストレス解消や不眠症の改善に効果があります。
また、アメリカのテンプル大学健康科学センターにおいて、トリプトファンの鎮痛効果が証明され、頭痛や歯の痛み、生理痛などの痛みを軽減する鎮痛剤としての役目が期待されています。
出汁を飲むと落ち着く~というのはこの多様な香り成分とトリプトファンの効果から得られているのかもしれませんね。
加工品や食品添加物だらけの食事で新型栄養失調が気になる食事をしている人は、マグカップでかつお節、煮干し、昆布などいれてお湯を注いで飲んでみましょう。
ミネラル豊富なホットスープになります。
誰もが一杯のお味噌汁やお出汁で、「あ~っホッとする」とそのUMAMIと香りに癒されたことがあるでしょう。リラックス効果のある日本が誇る出汁、その効果を毎日いただきたいものですね。
この記事のコメンテーター
社)日本アンチエイジングフード協会
リーダーマイスター
倉島のぞ美
ストレスのかかる毎日、食事でホッとできることは一番だと思います。
ジュニアマイスターの講座の中でも毎日簡単にできるお出汁の使い方・作り方もご伝授していきます。