2017.1.2 月曜日
私のマイクロバイオームを育てる方法 ~毎日の食と生活用品を見なおそう〜
人間が体内に持つ共生菌のネットワーク「マイクロバイオーム」は、もうひとりの自分。腸や皮膚、さまざまな部位に棲み、環境に影響を受け生きているもう一人の自分のようです。一方で環境汚染やライフスタイルの変化でダメージをうけ得やすいものであることも事実です。自らのマイクロバイオームを守り、健全なバランスに保つために、私たち自身でできることはあるのでしょうか。最新の研究結果から、腸内のマイクロバイオームを回復させるための方法がいろいろとわかってきました。
腸内細菌を活性化させる3つの方法
腸内細菌、なかでも良い効果をもたらす有用菌を活性化し、腸内マイクロバイオームのバランスを摂るための食事として、3つの方法が考えられています。1つは「プロバイオティクス」といい、発酵食品の摂取などにより、生きた菌を直接腸内まで届ける方法。そして2つめの「プレバイオティクス」は善玉菌の餌になるもの(オリゴ糖やデキストリンなど)を腸内に送り、その増殖を支援するというもの。そして3つ目に、菌が生きていなくてもその生成物やビタミン類など直接腸に良い働きをする物質を摂り入れる「バイオジェニックス」という考え方があります。
名称 | 効果 | 物質 |
---|---|---|
プロバイオティクス | 有用と思われる菌を生きたまま腸内まで届け、腸内のマイクロバイオームのバランスを改善する。ただし、届けられた菌が定着する確率は低いため、多種類の菌を大量に毎日摂ることが必要 | ヨーグルトなどの発酵乳や乳酸菌飲料(生きた菌だけに限定されたもの)、ぬか漬け、味噌、キムチ、納豆などの発酵食品など |
プレバイオティクス | 腸内善玉菌の餌となるものを摂取し、増殖を促して腸内のマイクロバイオームのバランスを整える。 | キャベツやごぼう、アスパラガスなどの野菜やバナナやぶどうなどの果物(食物繊維やオリゴ糖を含んだ食品)など |
バイオジェニックス | 腸内善玉菌の生成物と同じものや腸に良いものを直接摂取することで、腸内細菌を介さずに身体に直接働きかける。結果、腸内のマイクロバイオームのバランスの正常化を図る | 乳酸菌生産物質、生理活性ペプチド、DHAなど |
腸内細菌を活性化させる主な食品
それではそれぞれ3つの方法に紐づく食品を具体的に紹介しましょう。まず「プロバイオティクス」に該当するのが、ヨーグルトなどの発酵乳や乳酸菌飲料(生きた菌だけに限定されたもの)、ぬか漬け、味噌、キムチ、納豆などの発酵食品です。ただし、注意すべきはこうした発酵食品の品質です。
添加物のはいっていない発酵食品を選ぶ習慣を
中には、発酵を十分にさせずに味わいだけを再現したものや、砂糖や食塩の他、食品添加物を大量に浸かっているものなども見受けられます。できるだけ、品質の良いものを手に入れるためには、手作りするのが最も望ましいと言えるでしょう。また、そうして摂取した菌のほとんどは胃酸により死滅し、たとえ腸に届いたとしてもなかなか定着することは難しいと言われています。大事なのは常に同じ食品ばかりでなく、様々な食品を選び、多様な菌を大量に毎日摂ることが大切です。
続いて、「プレバイオティクス」については、腸に届いて腸内細菌の餌になり、結果として健康に良い影響を及ぼすものという考え方に基づきます。その代表格が「繊維質」と「オリゴ糖」です。オリゴ糖はガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、乳果オリゴ糖、キシロオリゴ糖、イソマルオリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、コーヒー豆マンノオリゴ糖、グルコン酸などがあり、食物繊維にはポリデキストロース、イヌリン等が効果を認められています。
こうしたプレバイオティクス成分を摂ることで、有用菌が元気になるだけでなく、炎症を抑える、体内のミネラル吸収効果を高める、満腹感を与え肥満を防止する、糖化を抑制するなどの効果もあります。
そして、「バイオジェニックス」については、まだまだ研究の途上にありますが、腸内細菌が作り出すとされる生成物については、たとえば乳酸発酵飲料、酢や魚醤などの発酵調味料などに含まれると考えられています。他には乳酸菌の菌体成分そのものなども該当します。具体的には、短鎖脂肪酸(乳酸、酪酸、酢酸など)、必須アミノ酸、遊離アミノ酸などで、他に植物性フラボノイドやビタミンA、C、D、E、DHA・EPAなども該当し、現時点で確認されている有効成分は352種類に上っています。サプリメントなどでも摂取は可能ですが、基本的には食事から摂るのが望ましいでしょう。たとえば、フラボノイドはワイン、紅茶、コーヒーやチョコレート、そして様々な野菜に含まれていますし、DHAやEPAは青魚やアマニ油、シソ油、エゴマ油などに含まれます。
腸内細菌を活性化させる生活
マイクロバイオームを健全に保つためには、食べるものだけでなく食べ方、背活の仕方も大切です。たとえば、水に含まれる塩素は大敵。飲んだり料理に使ったりする場合は必ず濾過して、塩素や他の汚染物質を除去してからにしましょう。また、できるだけ農薬や化学肥料を使わない野菜を選んで購入し、添加物およびBPA混入のリスクを避けるために缶詰や加工品などは避けましょう。
掃除大好き、薬習慣であなたのカラダから有用菌が逃げていっていませんか?
生活用品にもぜひともマイクロバイオームを損ねないものを選びましょう。プラスチック製の容器や水筒をできるだけ避け、自宅はよく換気し、可能であれば清浄機を使うと良いでしょう。ただし、ダクトやフィルターはこまめに清掃し、殺菌・消臭スプレー、合成化学物質を使った芳香剤は使わない方がベター。同様に洗剤やクリーナー、美容製品などもできるだけ合成化学物質を避けるようにすると良いでしょう。過剰な殺菌・消臭は人間のマイクロバイオームにも悪影響を及ぼすと考えられています。
また、環境中の有害物質を吸着して除去する植物を室内に置くのも有効と考えられています。手に入れやすく、効果が高いとされている植物としては、アロエベラや菊・ガーベラなど。また、NASAにより空気清浄効果が認められ、かつアメリカParents Centerによる「子供に安全な植物リスト」にも載った観葉植物として、オリヅルラン、サンセベリア、ドラセナ•フラグランス(「幸福の木」と呼ばれることも)、ポトス、アグラオネマなどがあります。
そして、日常的とはいえないかもしれませんが、実は「断食」もマイクロバイオームの一部である「ミトコンドリア」を増やし、活性化することが知られています。断食を行うと脂肪を分解してケトン体という分子が作られ、その1つであるβヒドロキシ酪酸(βHBA)は脳の優れた燃料になるだけでなく、脳細胞の成長を促進し、ミトコンドリアの健康や増殖を助けます。また、断食によるカロリー制限がアポトーシス(細胞死)を最小限に抑え、ミトコンドリアのエネルギー生産力を高め、同時にフリーラジカルの生成を減少させることで神経を保護するという研究結果もあります。毎日実行するのは辛いかもしれませんが、1年のうち定期的に1~2日ほどの食事制限をしてみてはいかがでしょうか。