2017.10.2 月曜日

未来世代のために ~環境予防医学を学ぶ(その2)~  千葉大学大学院 環境生命学・予防医学センター 森千里教授をお迎えして


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写真は鴎外荘にて。鴎外の書を見上げる白澤理事長と森千里先生。
前回のレポートでは森先生の講義で、胎児の化学物質による汚染はほぼ100%である、という驚愕の結果に戸惑いを隠せなかった私達ですが、そうなると少しでもその化学物質による影響を避けたいもの。汚染物質による人体への影響を避けるにはどうしたらよいのでしょうか?

汚染物質による人体の影響を避けるには

テキストによれば、
①現状認識(自分はどれくらい汚染されているのかを知る)

②行動に移す(生活習慣の改善で体内濃度を下げる)

③生殖年齢にある若い世代の生活を改善し将来世代が健康な生活を楽しめるようにする
とあります。

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確かに現在では、有害ミネラルの検査や化学物質検査もあるのでそれらを利用して自分の身体を知ることも大切です。今回のような講座を聴かないとなかなか調べてみようという気にならなかったのではないでしょうか?興味のある方はぜひ調べてみてみてください。
(※協会会員の方には限定数で検査が受けられます。)そして興味深いのは生殖年齢にある若者への教育です。

命を次世代につなぐために。環境予防教育と性教育はセットで教えるべき。

森先生はこれからの時代、環境汚染から自分を守る環境予防教育と性教育は、思春期から学校で教えるべきであると力説してくれました。
それこそが次世代に命を繋げるということだとも。こうしてみると次世代に命を繋げることは医学だけでなく、環境教育、性教育など安心で健康な世界を生きるために複合的な取り組みは必要だということを改めて感じます。

環境化学物質暴露を避ける具体的な方法

上記の汚染物質による人体の影響を避けるには、②行動に移す、と示してくれた具体的な方法についても触れておきましょう。口からの食による経口汚染に絞った場合ですが、

  • 汚染の低い地域産を選ぶ。
  • 汚染の低い種類を選ぶ。
  • 汚染の程度がわからない食材は、一か所の店で購入しない。
  • 同じものを食べ続けない。
  • ひと手間加えて(加熱調理)で環境汚染物質を減らす。
  • 必要以上に魚や肉を食べ過ぎない。
  • 薬や特定の成分を濃縮したサプリメントは必要最小限にする。

という指導もいただきました。特にヒトは食物連鎖の最終にあたりその化学物質摂取濃度も非常に高くなります。、無類の魚介好きの国民。水銀やダイオキシンなど魚介類から摂取してしまう場合が7割以上にも上っているのです。タンパク質は安全に肉・魚・卵・大豆など平均的な摂取を心がけましょう。

ケミレスタウンとは

シックハウス症候群対策~暮らしの安全を考える~
食の次には実際の暮らしの場の汚染にも話は繋がりました。「ケミレス」とは「Chemilal(化学物質)」と「less(少ない)」をつなげた言葉で、 可能な限り有害な化学物質を削減する、という意味の造語です。
千葉大学予防医学センター・柏の葉研究棟では、シックハウス症候群など、 環境由来の健康影響を予防できる街づくりを目指して、研究を進めています。詳細はこちらからもご覧ください。住まいからの吸気、に関してあまりにも無頓着になっている私達。どのように暮らすか、どこに住むかは今後の健康を左右する大きな支点となって注目されてくるでしょう。
https://chemiless.wixsite.com/chemiless

スマホ授乳で育った子ども達はどうなるのか?

非常に濃い講演が終わり、質問コーナーの最後、森先生からのお話しで印象的だったのは、今のお母さんたちのスマホ授乳の問題です。スマホをいじりながら授乳させているお母さんたちはその電磁波の影響を深くは考えていない。
将来、その子ども達になんらかの影響がでるのではないか、森先生は警鐘を鳴らしています。利便性が追及され過ぎている現代、スマホなしでは不安や孤独感を感じて追い込まれてしまうというお母さんたちに大きな違和感を感じるとお話ししてくださった森先生。

今後100年先のSustainable Health Science(未来世代のめの環境健康学)はどうなっていくのでしょうか?おりしも、森先生の曾祖父・森鴎外が目指した近代予防医学と環境予防医学のお話しと現代の警鐘のお話しが折り重なってお話ししているように聞こえたのでした。

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写真は懇親会の鴎外荘で。舞姫執筆の家をご案内いただいている様子。