2016.6.3 金曜日
どうしてこんなにがんが増えたのか。 「食の欧米化」と「化学物質」を追え。
日本人の死因の1位である「がん」。日本人の平均寿命が延びるのと、がんが増えてきたこととは相関関係にあるため、なんとなく「年をとればかかるもの」と思いがちですが、「国民病」になったのは、実は1980年以降。1950年からわずか30年の間になんらかの変化があったことが想定され、その原因として「食生活の変化」が大きいと言われています。はたしてどこに問題があり、どのように食べ方を意識するべきなのでしょうか。
30年間で大きく変化した「日本人の食生活」と「がん」
いまや「がん」は日本人の2人に1人がかかる病気であり、3人に1人が死亡するという恐ろしい病気です。早期発見・早期治療で治る確率が高まり、不治の病のイメージはなくなってきたものの、治療に長くかかることもあり、身体的・精神的・金銭的負担も大きく、避けて通りたいところでしょう。
出典:厚生労働省「平成25年 人口動態統計」
その原因として「喫煙」とともに、第一位にあげられているのが、「食生活」です。これまでの調査や研究のデータから「食生活」の影響が約30%、「喫煙」が約30%であることが明らかになっています。その「食生活」が戦後から急激に欧米化したこと、それが日本人のがん発生率の急上昇につながっているというわけです。
奇しくも欧米的な食生活が「がん」につながりやすいということが判明したのは、1970年代のアメリカです。心臓病に加えて急増しつつあった「がん」撲滅を目指して、予防政策がとられ、上院に「栄養問題特別委員会」を設置して、アメリカ国民の食生活を調査し、その結果が「上院リポート」にまとめられました。いわゆる「マクガバンレポート」であり、この中で、いわゆる「欧米食」の象徴である肉食をセーブし、季節の野菜や海草、魚介類を積極的に摂りながらカロリーを押さえることを推奨しています。さらにこれを受けてアメリカ国立がん研究所(NCI)は、がんと食事の関係を調べ、「デザイナーフーズ・プログラム」を発表しました。
このプログラムで米国での野菜消費量は飛躍的に増え、がんの発生率や死亡率も1990年代を境に少しずつ減っています。特に、食事と密接な関係のある大腸がんや生殖器系のがんにおいて顕著に効果が出たとされています。
一方、日本では逆に野菜を中心とした日本の伝統食から、肉や油の多い欧米食へと変化しました。それと足並みを揃えるかのように、がんも増えてきており、特に大腸がんや生殖器系では若年化が進んでいます。
公益財団法人がん研究振興財団 がんの統計2014より
そうした結果から鑑みると、がん予防のためには、細胞を傷つける糖化や酸化を防ぐフィトケミカルや、腸内環境を整える繊維質を意識して、野菜を中心にした「日本の伝統食」に回帰することが有効と言えるでしょう。
<コラム>
がん予防につながる「日本の伝統食」
1) 抗酸化物質が豊富な野菜をたっぷり
がん化を引き起こす細胞の変質は、活性酸素による酸化や高血糖による糖化などが大きく影響しています。それらを抑制する抗酸化・抗糖化物質を意識して摂りましょう。特に野菜に含まれるフィトケミカルは最有力物質です。
2)繊維質を摂って腸内環境マイクロバイオームを整える
大腸がん予防に効果的なのが、繊維質。体内から余分なもの、毒性のあるものを効率的に排出し、腸内環境内の細菌バランスを整える働きを持っています。特に腸は、日々発生するがん細胞を駆逐する免疫システムを司る重要な場所であり、それががん予防にも大きく紐づいているといえるでしょう。
3)油や糖質を摂りすぎず、肥満を避ける
もともと欧米食に比べて油分が少なく、ローカロリーといわれる日本食。しっかり野菜類を摂って、糖質であるご飯を食べ過ぎなければ、そうそう太ることはありません。これまでの研究結果から、肥満はがんの危険因子の一つことは明らか。つまり、その意味でも、伝統的な日本食はがん予防に適していると言えるでしょう。
●免疫力を落とす深刻な「化学物質」のリスク
「がんを予防する食べ方」において、食材選びはもちろんですが、農薬や食品添加物などの化学物質をできるだけ体内に摂らないことも重要ポイントといえるでしょう。化学物質には体内に入るとフリーラジカル化して、体内を傷つけるものも少なくありません。たとえば、どんなに野菜が豊富でローカロリーといっても、食品添加物たっぷりの加工品は避けたいもの。
とはいえ、これだけ農薬が使われ、加工食品がで回る中では、どうしても避けられない傾向があり、飲み水や空気からフリーラジカルを取り込むことも少なからずあります。そうした体内に取り込んでしまった有害物質を排出するためにも、水分をしっかりとって、繊維質などのデトックス効果の高い成分を積極的にとることが大切です。